それからというものの、どピンクの財布がいつ戻ってくるのか
楽しみに毎日待っていました。
Aちゃんが使ってたとか別にそんなのどうでも良いから早く返してほしいという
今思えばなかなか不思議なマインド。
ところがAちゃんの停学は1か月程度続き、停学期間が終わってからも
Aちゃんは学校に来ませんでした。
あるとき先生からこんなお話が。
「Aちゃんは、クラスに戻れない気持ちがあり学校を退学すると言ってます。
まだ本人も迷ってるし学校側も話し合いを重ねています。
みんなにはまた進展があったらお話しします。」
先生が去ったあとクラスの一部の子たちがこんなことを言い出しました。
「Aちゃん、受け入れてあげようよ」
「Aちゃんも反省したと思うし、辞めるのは可哀想だよね」
「やり直すチャンスあげないと」
そしてその子たちは周りの子たちにAちゃんがクラスに戻る是非について
聞いて回りだしました。
「どう思う?」「受け入れてあげない?」と…
ただ、その子たち(3、4名くらい?)は全員盗難被害に遭っていない子でした。
盗難被害に遭った子たちは皆、浮かない顔をしているように感じました。
実際私もその一人でした。
大人になった今なら、Aちゃんが更生するチャンスや
受け入れてあげる場所を作ってあげることが
大事だと理解できます。
そしてもし当時の自分が、今の自分の娘だったらと考えると
「許してあげよう、だれでも間違いは犯すから」と諭したと思います。
でも当時の自分は子供だったので
”なぜ被害に遭った私たちが我慢をして受け入れなきゃいけないの?”
”自分が犯したことで戻りづらいなんて自業自得。”
”戻ってきてもどう接すれば良いんだよ”
と思っていました。
また、被害に遭っていない子たちがAちゃんを擁護して
周りを説得している状況も私の感情を助長させたように思います。
結局、一部の子たちはAちゃんに戻るように声がけしていたらしいですが
1か月ほどしてAちゃんが正式に退学することが決まりました。
そしてそのあとの冬休み、Aちゃんが母親と一緒に私の家に謝罪に来ました。
事件が起きてから4か月。犯人が分かってからも2か月近く経っていました。
約束の時間より遅れてやってきたAちゃんとお母さん。
Aちゃんのお母さんはあまり切迫した様子はなく、のほほんとした印象でした。
Aちゃんはどピンクの財布をさしだし、「すみませんでした」と言い私に返しました。
Aちゃんのお母さんが
「たくさんの人に迷惑をかけており、弁済額が多くてお金はすぐ返せない」
と言っていました。
私は心の中で「は?ふざけんなよ借金してでも今日持ってくるだろうよ
1週間メシ食わないでも返すだろうよいつまで待たせんだよ優先順位ぃいぃいい!!!!」
とブチぎれてましたが
ぷちこの母は「大丈夫です。お待ちしています」と答え、
相手方を気遣ってか他愛もない話を振ったり、終始おだやかに話していました。
Aちゃんのお母さんはお茶でもしに来たかの如く時折声を上げて笑うような場面もありながら
母と話していました。
Aちゃんは終始気まずそうな、ばつの悪い顔をしてうつむいていました。
そうだよね、私ずっと般若の顔で睨んでたから←
そのうち二人は帰っていきました。
お金はそれから1か月半ほどで返ってきました。
その後、クラスでたまにAちゃんの噂を耳にしました。
退学して地元のスーパーでアルバイトしてる。
そこでも盗難事件を起こしたらしいと。
完